最高裁判所第一小法廷 昭和27年(あ)3533号 決定 1953年7月02日
本籍
広島市南町三丁目一〇〇四番地の一〇
住居
別府市楠浜区柳町七組
リンタク運転手
上野頼満
昭和二年五月一四日生
右に対する傷害致死、傷害被告事件について、昭和二七年五月三一日福岡高等裁判所の言渡した判決に対し被告人の原審弁護人柴田健太郎から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人柴田健太郎の上告趣意は、単なる訴訟法違反、事実誤認の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
(そして、「原判決の理由は、稍簡に失するけれども、第一審判決の認定事実によると正当防衛に当らないこと勿論であるという趣旨の判示であると解される。そして、第一審判決の認定事実によれば、被害者の暴行は、仲裁の余地が存し、従つて、必ずしも急迫の侵害といえないし、また、被告人は自らも喧嘩闘争の決意を起し判示折込ナイフを以て兇器を持たない被害者を殺傷した事態に照し、権利を防衛するため已むことを得ないでなした行為ともいえないこと明らかであるから原判決の説示は、当裁判所においても正当としてこれを是認することができる。」なお、原判決は、過剰防衛として刑の免除をなすべき場合でないともいつているから、理由不備もない)。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 斎藤悠輔 裁判官 真野毅 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)